はじめに
人工知能の発展が注目を集める中、その実装に多く使われているPythonの勉強を始め、その習得には実データの分析が早道と考えていたが、偶々、掲題のコンテストがあることを知り、良い機会と考え応募した。
アプリケーションやWebサービスを作成するビジネス部門は無理と判断し、調査研究レポートを作成する研究部門に応募することとした。本稿はその骨子を出来るだけ簡潔にまとめたものである。従って、Pythonのプログラミングそのものは割愛した。
課題は、物流の3つの分野、ピッキング、輸送・配送、物流拠点計画であるが、時間的制約もあり、ピッキングを主とし、輸送・配送は可視化、物流拠点計画はデータの取得にとどまった。
1.研究の手順とツール
ツールは、Python3とそのライブラリーを使用、ライブラリーのうち、basemapとOrangeについては、python2を使った。
図1 研究の手順とツール

2.ピッキングデータの分析
(1)仮設の設定課題テーマは、ピッキング作業の正確性と効率性の向上であり、その一つの指標がピッキング時間の短縮である。このための施策と考えられるのは、受注データは変えられないとして、制約条件の厳しい方から、(a)倉庫施設の変更(機械化、レイアウト) (b)ピッカー装備の変更(スマートグラス等)、(c)商品保管ロケーションの変更 (d)ピッキング方式の変更(ピッキングロボット、注文のまとめ方、順序、通いかごへのまとめ方等) が考えられる。但し、(a)(d)については、関連情報がオープンデータに含まれていないので、検討の対象外とする。
(2)データの取得と基礎統計・整形APIによるデータ取得や基礎統計・集計は、データの内容を把握・理解する上で重要であり、また、時間も相当かかったが、詳細は割愛する。データは2016年2月17日の午後のデータである。
(3)データの可視化(a)位置ログデータ(作業員の倉庫内の位置情報)
図2 全ワーカーの動線の散布図

全作業員のxy座標による位置データのてを散布図に描くことにより、作業員の動線が描かれ、ピッキング用棚の配置が浮かび上がった。提供されたwarehouse_mapと同一の形である。空白のスペースには、事務所、垂直搬送機(2基)、エレベータ(2基)が存在する。
(b)作業ログデータ(作業員のハンディ端末およびスマートグラスによる作業ログデータ)
作業員(ワーカー)は、workerIdから、1/2/5/8/9/10の6名のワーカーがいることが判る。その行動を、時間/棚番号/xy座標の3つの軸で見える化した結果が以下の図である。
図3 各ワーカーのアイテム当り作業時間 図4 各ワーカーの作業棚番号

上図より次の通り推定できる。
(i)60秒以上の間隔の時は、通いかごに積むか、集荷場への戻り
(ii)3分(180秒)以上の間隔は、他の作業(準備作業や休憩)に従事
(iii)各ワーカーのピッキングしている棚番号の時系列推移が判る。各ワーカー毎に主に担当する棚が別れており、ワーカー8は別フロアーの担当と推測される。
図5 全ワーカーの動線(xy座標) 図6 各ワーカーの動線(xy座標)


上図を観察すると各ワーカーの作業の特徴が見えてくる。詳細は省くが、大きな特徴として、HADY端末とSMARTGLASS端末により、ピッキング作業のやり方に違いがありそうなので、両方の端末を使用しているワーカー1の行動に焦点を当ててみる。
図7 ワーカー1の動線と時刻 図8 ワーカー1の時系列棚番号


ワーカー1は、前半はSMARTGLASSで、後半はHANDY端末で行われ、ピッキングエリアもピッキング動線(規則正しさ)も異なる。また、右側の図のピッキング時間については、後半の始めが大きすぎるので、時系列を前半(14:21:41 〜15:19:57)に焦点を当てたグラフも作成する。すると、ピッキング時間の山がある程度規則的に現れ、ここで何か意味のある作業(集荷場への運搬)をしていると推定される。
(4)分析手法課題テーマは、ピッキング作業の正確性と効率性の向上であり、正確性については作業ログデータの作業備考(activityNotes) を、効率性についてはピッキング作業時間と商品のロケーションの2つの視点から分析する。商品のロケーションは、保管方式と商品形状による制約を満たした上で、
(i)ピッキング頻度の多い商品を集荷場から近いところ
(ii)同一オーダーに含まれる可能性が高い商品を互いに近いところ
に配置することが原則である。これにより、ワーカーが歩く距離を短縮でき、ピッキング時間の短縮につなげることが可能となる。
(5)分析(a)作業備考の分析
スマートグラスの場合、作業備考(activityNote)が得られ、クロス集計によりその内容を分析する。GLASS_INPUT_LOCATION、GLASS_INPUT_ITEMの2つのactivityで作業備考(activityNote)が得られており、そのクロス集計する。すると、【不正な商品コードです】、【入力された値とピッキング数が一致しません】、【該当するピッキングデータがありません】などのミスが起きた回数が集計できる。ただし、ミスの詳細は不詳であり、発生件数は、データ数1,479件の中で、354件と発生比率は低くないが、どう対応されたかの情報がなく、HANDY_PICKでは、作業備考についての情報がないので、使用機器の違いによる正確性の違いは比べられない。従い、今回のオープンデータのみでは、ピッキング作業の正確性について、深く分析することは出来ない。しかし、図5のワーカー動線からは、SMARTGLASSを使用した場合は、規則的なジグザグ動線となっており、予め注文データが整理され、効率的なピッキング作業が行えるようになっていると推定される。
(b)作業時間の分析
(i)ピッキング作業量当たりの作業時間
作業ログデータから、ピッキングの商品アイテム数と商品個数およびGLASS_PICK_DONEにより1アイテムのピッキングが終了すると推定して計算した作業時間のデータを抜き出し、それらの関係を調べる。単純に、ピックアイテム数およびピック商品数当たりの所要時間を計算する。
表4 ピッキングアイテム数および商品数当りの所要時間

所要時間は、商品数よりもアイテム数により大きく影響され、ワーカーにより差はあるものの、HANDY_PICKよりSMARTGLASSの方が所要時間が短く効率的と推定される。
(ii)ピッキング作業量当たりの作業時間の重回帰分析
ピックアイテム数(x)とピック商品数(y)によりピッキング時間(z)を推定する重回帰分析をpythonのscipyライブラリーや3Dグラフを使って行う。使用データは下表の通り。
表5 所要時間とピックアイテム数とピック商品数

得られた重回帰式は、z=10.61x+6.42y+1,266 であるが、判りやすいように3次元グラフ化する。
図9 アイテム数と商品数によるピッキング時間の重回帰

3次元グラフは見にくいが、原図はpan(視点を上下左右に動かす)することにより見易くなる。
本分析はサンプル数が8つと少ないので結論とは言いにくいが、左記の3次元散布図と重回帰平面および前ページの単位ピッキング作業当たりの平均所要時間を見ると、
(i)生産性が高い(所要時間が短い)のは、1,2,10のHANDYと1,2のSMARTGLASSである。アイテム数と商品数の規模が似通った中央付近のデータで比較するとSMARTGLASSがピッキング時間が短い。
従って、SMARTGLASSの方が生産性が高いと言えよう。
(c)商品ロケーションの分析(その1)
最初に、分析手法で述べた (i)ピッキング頻度の多い商品を集荷場から近いところ という点について検討するため、ピッキング作業の特徴を把握する。それは同一アイテムが何回ピッキングされたか、同一アイテムの1ピッキングでの商品数、ピッキング作業時間の分布の3つで捉える。結果を出力の冒頭部分で示す。全ピッキング数は720回である。
(i)同一商品アイテムのピッキング回数
商品ID ピッキング回数
581 5
647 4
654 4
328 4
343 4
285 3
28 2
535 2
(以降略)
殆どは1回ピッキングのみであり、複数回ピッキングされている商品は、5回:1商品、4回:4商品、3回:1商品、2回:23商品で、その商品IDは上表に示す通りである。
(ii)一アイテム当りのピッキング商品数
ピッキング商品数 ピッキング回数
1 412
2 129
3 69
5 33
4 26
10 11
20 9
1アイテム当りのピッキング商品数は、多様であるが、殆どののアイテムが1個で412ピッキング、次は2個が129ピッキングである。ピッキング商品数5個までで、全720ピッキングのうち669ピッキング(93%)を占める。
(iii) 1ピッキング当たりの作業時間の分布
作業時間 回数
15 27
13 26
14 24
23 23
10 22
16 22
11 20
19 20
1ピッキング当たりの作業時間は幅広く分布しているが、多いのは10秒台から20秒台で、13〜15秒がトップ3である。
(d)商品ロケーションの分析(その2)
次は、分析手法で述べた (ii)同一オーダーに含まれる可能性が高い商品を互いに近いところ という点について検討する。このために、「おむつとビール」の逸話を生み出したアソシエーション分析が有効である。アソシエーション分析は、「Aという状態が起きている時にBが起きる確率」を求めることになり、「{A}⇒{B}」と表記し、これをアソシエーションルールと呼ぶ。このルールを評価する指標として次の3つがある。
a.支持度(support):「{A}⇒{B}」/全データ数
b.確信度又は信頼度(confidence):「{A}⇒{B}」/{A}のデータ数
c.リフト値(lift):確信度(A⇒B)/{B}のデータ数
一般的な目安としてはリフト値が1より大きい場合は有効なルールとされるが、3つの指標を総合して判断する必要がある。Pythonでは、Orangeライブラリーによりアソシエーション分析ができる。
(i) 入力データの準備
トランザクション形式の入力データ
2,3,4,5,6,7,8,9,11,13
29,31,32,34,35
38,40,42,43,45
16,12,14,17,19,21,22,24,25,28
67,71,73,74,75,77,79
88,90,93
99,100,101,103,105,107,108,113,114,115,116,117,118,120,123,125,127
131,132,134
139,141,143,150,152,154,156,160,161,162
170,173,174,177,178,180,181,182,183,184
188,190,192,193,198,200,202,204,206,207,208,210,212,213,214,216,218,220,221,223
228,229,232,236,238,239,241,243,245,247,251,252,253,254,255,256,257,259
264,267
271,272,273,274,275,278,279,281,283,285
(中間省略)
680,681,199,683,684,686,688,690,691,693,694
696
注文データはオープンデータに含まれていないので、作業時間が60秒以上であれば、その前にオーダーの処理(集荷場へ運ぶ等)作業があったと仮定し、注文番号を作業ログデータの中に新たな列(order_number)を設け作成していく。その結果、107個の注文が想定出来た。
そして、アソシエーション分析の入力データとして使えるようトランザクション形式に変換する。そのデータはcsvファイルで次のようになった。
【参考資料】Big Data Magazine「第2回:アソーシエーション分析〜「使ってみたくなる統計」シリーズ〜
(ii)アソシエーション分析
アソシエーション分析の結果の出力
conf lift support rule
0 1 53.5 0.0186916 149 -> 147
1 1 53.5 0.0186916 147 -> 149
2 0.666667 35.6667 0.0186916 285 -> 283
3 1 35.6667 0.0186916 283 -> 285
4 1 53.5 0.0186916 247 -> 229
5 1 53.5 0.0186916 229 -> 247
6 1 53.5 0.0186916 28 -> 25
7 1 53.5 0.0186916 25 -> 28
8 1 53.5 0.0186916 28 -> 25 24
9 1 53.5 0.0186916 28 25 -> 24
10 1 53.5 0.0186916 28 24 -> 25
11 1 53.5 0.0186916 25 -> 28 24
12 1 53.5 0.0186916 25 24 -> 28
13 1 53.5 0.0186916 24 -> 28 25
14 1 53.5 0.0186916 28 -> 25 24 22
15 1 53.5 0.0186916 28 25 -> 24 22
16 1 53.5 0.0186916 28 25 24 -> 22
(以降、省略)
作成した入力データをOrangeライブラリーで分析し、結果をデータフレームの形式に変換し、冒頭部分を出力した。
その結果、表6に示す4つの商品グループでアソシエーションルールが得られた。指標を見ると、supportは全て0.0186916であり、これに全注文数107を掛けると2となり、2つの注文の間で共通商品がピッキングされていることを意味している。
商品群とその他の指標は次の通り。
表6 アソシエーション分析の結果

アソシエーション関係のある商品群と指標この結果は、これらの商品のロケーションを互いに近いところに置くべきということになる。
【参考資料】あれもPython,これもPython 2016-03-13 「Pythonでデータサイエンスを試す(7_アソシエーションルール」
(5)まとめ以上の分析結果を、(1)の仮説の設定で仮定したピッキング作業効率化のための施策に順次照らし合わせて纏める。
施策(b) ピッカー装備の変更(スマートグラス等)
スマートグラスとハンドピックを比べると、スマートグラスの方が、
(i)ミスの内容が把握できている
(ii)作業員の動線が規則的で、移動距離が短い、また、作業時間も短い。この点は作業時間の分析でも一応確かめられた。
の2点から優れている推定されるが、スマートグラス導入の経費、作業員の作業し易さ、上記(i)(ii)の定量的メリット を比較考量する必要がある。
施策(c) 商品保管ロケーションの変更
(i)ピッキング回数が多いという視点からは、商品IDが 581、647、654、328、343 といった商品を集荷場の近くに置くべきである。
(ii)ピッキング商品数が多いという視点からは、商品IDが 1、2、3、5、4 といった商品が注目されるが、商品の荷姿も考慮の上、入庫量が多いという視点から、入荷バースとの距離が重要視されるべきである。
(iii)同一オーダーに含まれる可能性が高いという視点からは、表6で示した4つの商品群の間で、アソシエーションルールが得られているので、これらは互いに近接したロケーションにするべきである。
今回は、2016年2月17日の午後のデータという短時間のデータを使用したため、実際の施策にするためには、データサンプル数が少なく、また、オーダーも推定されたものなので、その有効性は限定されるが、ここで行った考え方、アプローチ、分析手法、結果のまとめ方については十分な有効性があると判断する。また、対象データの範囲を広げることで、より有効で幅広い施策を検証できる。
3.輸送・配送データの可視化
輸送・配送データについては、時間の制約もあり、データの可視化にとどまったが、その可視化手法は地図上に様々な情報をプロットするなど他の分析にも参考となると思われるので結果を纏める。
図13 運転手種別のガントチャート 図14 事務所の立地


図15 事務所のクラスター別の保有車種 図16 事務所別の配送ルート


図19 運転手別の拘束時間の内訳 図20 事務所別運転手別の作業時間の内訳


まとめ以上のデータの基礎集計と可視化により、予想・配送データの内容の理解が進んだので、以下のような課題への施策を検討することとなる。
・安全に事故なく輸送を行うこと。適宜休憩を挟み無理な輸送を行わないなど、良好な労働状況を保つ必要がある。
•効率的な輸送。荷積みを行わず移動する空車の割合を減らすことや、高速道路使用料などの経費を抑えること。
•顧客側からは、事前に予定した通りの時刻に商品を届けて欲しいというニーズもある。
今回は、時間の制約からデータの可視化にとどまったが、効率化のためには、全国道路網の平均走行速度に応じた所要時間や経済性の分析が欠かせず、そのためには、給油と高速道路使用料の経費だけでなく、車両や事務所の固定費や変動費等のオープンデータに含まれていないデータも必要であり、これ以上の分析は困難と言える。
5.物流拠点計画に関するデータの取得本データについては、時間の制約もあり、データの取得にとどまったが、オープンデータの取得の例として紹介したい。2つのデータを例として示す。
表 世帯数データ

最後に
Pythonに未熟であること、時間的制約もあり、実際に使えるような成果が出せず中途半端に終わったのは非常に残念であった。
しかし、現実のデータを使って、Pythonでデータ分析を実際に行うことができ、書籍で学ぶのとは違い、現実データの得られ方、特に、分析に適しているように整理はされていないデータをどのように整形し、どのように手法を適用するかを学び、Pythonの習熟度を短期間に高めることができたと思う。
このような、現実データを公開されるという前向きの決断をされた主催者に感謝するとともに、このような動きが、日本のデータ分析の能力が高まり、それがグローバルにみて企業の競争力が強まることにつながると考えるので、多くの日本の企業に広がることを切に望むものである。
>>Big Data Magazine「第2回:アソーシエーション分析〜「使ってみたくなる統計」シリーズ〜
あれもPython,これもPython 2016-03-13 「Pythonでデータサイエンスを試す(7_アソシエーションルール」
第一商品のセミナーで今井澂さんの講演「最近の投資環境と金相場」を聞いた(2015/12/19)
今後の投資環境を考える上で参考になったので簡単に纏めてみる。(記憶違いはお許し下さい)
1.金相場
来年は金は上がる。その理由は次の2つ。
・米国にとっての不愉快指数が上がる。テロとの戦いは、国家間の戦いと違って終わりがない。特に、loan wolf(一匹狼)型のテロは予防が難しく、これがニューヨーク、ワシントンなどの中枢で起これば大変なことになる。
・ペーパーマネーの信用が落ち、実物資産、特に金の魅力度が上がる。ユーロに対する不信任が起こる。特に、来年9月のドイツの大統領選挙までは表面化はしないだろうがその後はドイツ銀行の破綻が起こり得る。詳細は2015.9月の雑誌「選択」の記事に書いてあるが、四半期決算の大赤字、BBB+への格下げが起きている。選挙後は何が起こるかわからない。一方、米国は、FRBの利上げがあり、ドル高円安が常識だが、来年前半はやや円高になるのではないか。ニューヨーク株も三段上げを演じ、運輸株は下がっており、そうすると工業株も頭打ちになる。そろそろ天井感があり、ファンドの破綻などもありリーマンショック前夜のような感じになってきている。今は流動性不足に陥っているので金を買う人はいないが、来年8月ごろには動き出すかと。
2.中国経済
中国は、夏は上海株が暴落したが、自動車保有税を無くしたり、担保を担保に貸すなどの対策で不動産、株の暴落は無くなり、景気は良くなっているが中身は悪い。鉄鋼、アルミ等の国有企業に赤字がたまっており、国有企業はつぶれないと皆思っているが、ソ連崩壊を予想した長谷川慶太郎氏とも話したが、2017年頃に破綻が起きるのではないか。高度成長はどの国でも10年は続かない、2017年からは生産人口が減ってくるので、2018〜2019年が危ない。
3.日本経済
日本経済は大丈夫である。既に、中国から逃げ出し在中国邦人は17万人から13.5万人に減った。安倍首相は中国が暴動や内戦になった時どうやって日本人を助けに行くか考えて安保問題に取り組んでいる。
中国の核兵器は重慶近郊にあるが、岩国の米軍基地はそれを見据えている。小松製作所の坂根会長は文芸春秋で中国は2011年に終わっているといっている。衛星で見れば、中国では20万件の暴動が起きていることが判り、公安警察が12億5千万元使って必死に押さえているが、もう押さえきれない。上海にいるマスコミの知人から聞いた話だが、中国の役人や党幹部から自分の子供を養子にしてくれないかと頼まれたが断った。中国人はそこまで危機感を感じている。
人民元がIMFのSDR(Special Drawing Rights)に採用されたが来年の9月までに為替や資本移動の自由化を迫られることとなるが、そうなるとヘッジファンドは人民元を売り崩そうとするだろう。中国経済は混乱し、日本の鉄鋼、造船会社が息を吹き返し、中国にぶら下がっている韓国は一発で駄目になる。
日本は1980年代のバブルの再来となる。その根拠は次の通り。
・原油価格が安いこと。
・空前の金融緩和であること。黒田バズーカ3弾は起こり得る。
・長期安定政権である。(1980年代当時中曽根首相のもとで自民は300議席を超えた)
・強力な株の買い手がいる。(GPIF,3つの共済組合、日銀、ETF)
・現在PERは13前後でバブルではなく、企業収益は円安、法人税下げで好調である。
・来年夏は衆参同時選挙が消費税を延期するかどうかで争われ可能性がある。
その他来年は、日銀が方針変更してマイナス金利へ、5/26-27の伊勢サミット、6/19以降の18歳以上への選挙権、オリンピック特需(30兆円)、成長率は3%前後へ、ジェネリック薬品、錠剤製造工場の高稼働、ホテル業界の好調、東南アジアとの交流の活発化、iPS細胞、研究開発費へのGDP3〜4%の投資、ロボット、農業や医学部などの岩盤規制に風穴を開けつつある、民泊、構造特区など好材料が目白押し。
以 上
今井澂氏の公式ブログ http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/
第一商品のセミナーで今井澂さんの講演「最近の投資環境と金相場」を聞いた(2015/3/21)
最近の投資環境を考える上で参考になったので簡単に纏めてみる。(記憶違いはお許し下さい)
1.金相場
各国中銀がQE(=Quantitative Easing)によりペーパーマネーの信用を棄損するような政策を取っていること、産金コスト等を考えると1,100㌦近辺が底。また、3/19に1919年以来続いていたロンドンでの金現物の値決め方法が変更された。詳細は公表されていないが、値決めの銀行に中国の銀行が加わり、金相場を上げるように動いてくると想定される。中国は元をドルと並ぶ基軸通貨にしたいと考えており、5万5千トンの金を保有していて元はそれを裏付けに持つ兌換通貨としての信用力を武器にしたい。AIIB(アジアインフラ投資銀行)の動きなども金融における英米の支配体制を崩そうとするもの。次に、金の国内価格に影響を与える為替について。
2.為替
現在の121円はいい水準で125円とか130円には行かない。その背景は次の通り。為替は日米の政治の問題であり、これ以上の円安は望ましくないという暗黙の了解がある。米国も同じことをやっているので黒田バズーカは了解しているが、米国民主党はUAWからの圧力がありこれ以上の円安は好ましくないとの暗黙の了解がある。連休の安倍首相の訪米ではTPPについて手打ちを行う。GPIFは最大の投資家であるが、内外の株式投資の比率を高めており、ドル債の購入はしていない。円安倒産が増えておりそれも好ましくない。TPPの手打ちを控えていて余り騒ぎにしたくない。
3.株式と原油
米国は9月頃に金利引き上げを行いそう。4月中に日本は2万円に上がるが米国は難しい。原油は40ドルすれすれか40ドル割れも。原油安で米国株は下がる。米国の財政収支と貿易収支の赤字は激減。貿易収支の赤字の2/3はエネルギーだが、シェールのお蔭でエネルギー自給率は2011年48%、2013年60%、2014年60〜65%と改善している。1月からシェールはブレーキがかかっているが、米国ではエネルギー関連産業はGDPの1割をしめる最大セクター、それが原油安で赤字になるとので株は下がる。ジャンク債もそろそろ逃げた方がいい。エネルギー/シェール関連がジャンク債の3割を占めている。エネルギー州のテキサス、ノースダコタ、アラバマ、ペンシルバニアの失業率が増えている。1月は失業率が改善したが、3月には悪化。従って、株も上がらないし、ドルも上がらない。さらに、2016年の米大統領選挙の民主党有力候補ヒラリークリントンはeメールゲート/ベンガジゲートのスキャンダルに見舞われており、オバマ大統領との関係も緊張している。共和党はジム・ブッシュが有力候補だが、クリントンのスキャンダルを材料にし、場合によってはオバマ大統領の弾劾までやるかも知れない。このようにアメリカ株は悪材料が多く、一方、日本株はニューヨークダウとの連動性が薄れ、2万5千円位まで上がるであろう。その理由は、
(1)日本経済が好調、それは円安と原油安のお蔭。日本の原油の自給率は0.3%、EUは3%、米国は60%。日本の原油・天然ガスの輸入額は26兆㌦から9兆ドルに減り、17兆ドルのメリットがある。官製ベアだけど給与も上がり、原油安もあって景気の好循環が始まる。今年の1〜2月に入って輸出数量指数が去年の10月と比べ上向き始めた。製造業の本家帰りも始まった。先日、足利の工業団地を訪問したら、土地が中国のアパレルが買いに来ていると。その理由が、(i)メイドインジャパンの品質の良さ、(ii)中国より土地が安い、(iii)労賃は変わらない。海外での設備投資より日本での設備投資の方が多くなった。日本株が上がっている。エーザイ、バイオテック、小野薬品等の薬関係や、株主優遇策を発表したファナック、キーエンスやSMCも連想買いされ、円安メリットの製造業やオリエンタルランド、ソフトバンク等。
4.日本株投資のやり方
(1)株式初心者はETF(上場投資信託)のJPX400がいい。一口1万3000円で、ROEの高い銘柄が入っている。維持費が安く、手数料は0.22%(普通は2%)。
(2)個別銘柄をやりたい人は、次の手順で自分で探す。
(i)会社四季報を買う。(ii)経常利益、一株当たり利益が前期/後期/来期で最高利益の更新をしている銘柄を探す。
(iii)過去7〜8年の株価グラフを見て、過去の最高値を更新しているところを除外して、まだ過去最高値の半分ぐらいのところを買い、最低1年ぐらい持つ。
(iv)アナリストのコンセンサスを読む(会社のコンサーバティブな予想より的確)
このようにして調べると、業種的には、自動車、自動車部品、ハウジング、○○重工、電子部品などに有望銘柄がある。今年は株式市場を利用しないと駄目、来年、再来年は続かない。
米国は前述したように、政治が混乱し、シェール絡みの動き。ブラジルのペトロブラスはスキャンダルで140ドルが4ドルへ。
中国は、公表のGDP伸び率7%はイカサマ、信じられる統計は、貨物の輸送量、電力消費量、銀行の貸出し。バブルが吹っ飛び、中国の政治家・官僚も不動産の投げ売りを始めた。日本のバブル崩壊も5〜6年はもったので、2018〜2019年が危ない。
EUはギリシャの金利が上がりだし、5月ごろにユーロは分裂か?ユーロ/ドルは1:1には必ずなるが、0.85まではいくのではないか。ジョージ・ソロスにロンドンで会ったが、彼曰く、「これは第三次世界大戦。第一次はカイザー・ウイルヘルム、第二次はヒットラー、メルケルは弾を撃たないで欧州合衆国を統合・深化している。各国の予算をEU官僚がチェック、騒ぎは収まらず、GREXITがこの2〜3か月で起こるのではないか。
ウクライナは、セバストポリの不凍港はロシアにとって手放せない。オバマの無作為が米国外交の大失策、シリアも中国とロシアが仲裁してしまった。スンニとシーア、保守と原理主義が入り混じってグチャグチャ。
その他(Q&A)
1.日本のメタンハイドレードは、名古屋沖は砂が入って今の技術ではダメ、日本海側に転進。
以 上
今井澂氏の公式ブログ http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/
2012衆院選の各党公約の比較と投票先選びの評価表
1.2012年衆院選の投票先選び
2012/12/16投票の衆議院選挙が迫ってきた。十数党が乱立する短期勝負の選挙戦であり、各党も準備不足かもしれないが、有権者もどの党に投票すべきか、選択が難しい選挙となっている。そこで、政治には素人ながら、新聞記事等を参考に投票先選びの評価表を作ってみた。
2.図による各党の公約の比較
最近の日本経済新聞と産経新聞の記事を参考に各党の公約の比較を判り易くするために、新聞記事の図を纏めてみた。先ずは日本経済新聞の記事を纏めたのが下図である。

産経新聞は次の図である。

3.投票先選びの評価表
2の各党の公約比較の図に基づいて、自分が支持する政策について政策軸のどちら側にあるかを明示して、各党の公約がそれに合っているかどうかで◎○△をつけて、最下行で総合評価する評価表を作ってみた。
この表は、どんな党があるのか、その党の代表者が判らないという人には一覧表となっているので、判り易い。

サンプルとして、評価表を埋めてみた。

このサンプルでは、日本維新の会または民主党またはみんなの党が意中の党という結果になった。
4.文章による各党の公約の比較
以上の簡単な作業で意中の党が比較的適切に選べると思うが、2の図による比較では物足りないという人は、次の表を読んで貰いたい。

この表のような要約版じゃなくて、各党の原文を読んでみたいという人は各党のホームページにアクセスしてもよいが、以下のサイトが纏めて提供して呉れている。
衆議院選挙2012 マニフェスト - Yahoo!みんなの政治 http://senkyo.yahoo.co.jp/manifesto/
第一商品のセミナーで今井澂さんの講演「世界と日本の投資環境と金価格」を聞いた(2012/3/17)
前回(2011/11/19)の講演もブログに書いたが、今回も簡単に纏めてみる。(記憶違いはお許し下さい)
「米国の景気回復」と「日本の夢=資源大国」という大きな流れは前回と変わりないが、この1〜2カ月の「円高」、「株高」や「ユーロ問題の鎮静化」の状況を反映して、今回のメインテーマは「流れが変わってきた」というもの。先ず為替から。
1.円安
これまでの日米の物価は、日本は17年で17%下がり(デフレ)、米国は毎年2%づつ上昇しており、この傾向が16年続くと、1ドル=50円になる。そのように主張している専門家もいる。だが、日銀がFRBと同様にインフレ目標(1%)を公表したことにより変わった。実際に1%の上昇が実現できるか不明だが、目標を決め折りに触れてこれに向けて金融政策を行うという日銀の姿勢がマーケットに大きな影響を及ぼす。元々、1ドル=75円と言う水準は行き過ぎであり、米国の政策もあって4年間円高が続いたが、これからは反転していく。韓国ウオンと比べても円高で、ソニーやパナソニックが大赤字になった。もちろん、相場は単純ではなく、揺り戻しもあるが2014〜2015年には120円以上になっていく。
前々回の円高は1995年4月クリントン政権による円高政策により、阪神淡路大震災の後にも拘わらず、ヘッジファンドが動いて79円35銭が実現された。為替はある変動幅の中で蛇のようにクネクネ動いている。
一方、アメリカは製造業が回復している。オイルシェールの発見でエネルギーコストが下がり、石油化学製品が売れだし、デュポンやダウの株が上がり始めた。ビルゲイツもエネルギー関連のスマートグリッドに投資している。
エネルギーが安く豊富になると景気は良くなる。19世紀初めのイギリスの本格的な産業革命も木炭から石炭にエネルギー源が転換することにより起こった。石炭が少なくなると、今度はアメリカで石油が出始めた。そしてガソリンが作られ自動車産業が発達した。オイルシェールは残念ながら日本には無いが、アメリカ、ヨーロッパ(ポーランド)、中国にある。この前、習近平はオバマ大統領と会って、米国からオイルシェールの採掘技術(水をリサイクルさせる)の導入を交渉したようだ。
中東のジャスミン革命では親米独裁政権が倒れたが、アメリカはもう中近東の石油はいらない。2014年には第二パナマ運河が完成し、アメリカはシェールガスをパナマ運河経由で輸出し、貿易赤字もなくなるだろう。ドル高の方向に行く。だから、現在の投資の狙いどころはアメリカの投資信託やドル建てMMFである。
2.金
金価格は「アメリカの不快指数」だが、アメリカは、2001年の同時多発テロ以降、時間もかかる対テロ戦争を戦い苦しんできたので金価格が上昇してきた。中国とインドの需要も衰えてきており、1800ドルの大台突破は難しい。1600〜1700ドルのボックス相場が続くだろう。今は去年の夏までの棒上げの整理の時期である。金は最高のリスクヘッジ資産なので、現物を長期に持つことが賢い。財産の3〜5%は金にするべきである。
3.投資方針
今後の投資方針としては、第一が為替、円安のトレンドにうまく乗る。第二は株、ダウは17000円が目先の天井と思う。
通貨ではユーロ、豪ドルもおもしろい。
日本の景気は、為替から株に波及し、3年先に実態経済もよくなる。為替は80円近辺で買えれば、2〜3年で120円が取れる。株は自動車株、東レ、帝人などの炭素繊維、3〜4年後まで待てればメタンハイドレード絡みの日本海底掘削、三井海洋開発、帝石などである。
4.配布資料
配布資料のデータに基づき説明。主なものは次の通り。
- 欧州は計107兆円の緊急融資で危機モードは収束。G.ソロスによる「一発も弾丸を撃たない欧州制圧」があと2〜3年かかるので、その間は生かさぬよう、殺さぬよう。時々「ドカン」あり。各国でECで働いた人が首相になった。
- 中国は輸出が頭打ちで元気が出ず、成長率は7%を切る。住宅バブルも終わり不良債権が125兆円。実際には250兆円。
- 米国は生産がリーマンショック前の水準に戻りつつある。稼働率も80%へ近付く。シェールガスの本格化で中近東の石油に頼る必要がなくなり、中近東から足を抜き始めた。 以 上
今井澂氏の公式ブログ http://kiyoshi-imai.cocolog-nifty.com/
マネックス「お客様感謝DAY2012」に行ってきた!(2012/2/4)
去年も参加しブログに書いたが、今年も面白かったので要点を纏めてみる。(手元のメモに基づいており聞き間違いはあると思いますがご容赦下さい。また【】内は著者によるコメントです)
マネックス社による案内については、次のURLを参照下さい。http://www.monex.co.jp/AboutUs/00000000/guest/G800/news2011/news112_31.htm
冒頭、2月8日からサービス開始する「マネックスシグナル」(銘柄の選択と売買のタイミングに関し、ロボットによる投資判断を毎夕メールで配信するサービス)について紹介。試用モニターの結果では、勝率はアウトライト戦略(5〜10日間の投資期間で単一銘柄に投資する戦略)で70%、ペアトレード戦略(同一業界に属する2銘柄を売りと買いでペアで投資する戦略)で58%の由。最大2カ月無料で試用できる。
第1部 基調講演『2012年のマーケット展望』青山学院大学教授 榊原英資氏
1.為替レートの見通し
2012年のマーケットについては、後半には円安に転じるという見方が多いが、自分は違う。
そういう大方の見方の根拠は、
(i)貿易収支が赤字になった。
(ii)消費税法案が通るか⇒野党自公の反対+民主党内の造反⇒解散⇒政治の混乱⇒国債の暴落
以上のいわば双子の赤字が円安をもたらすというもの。
だが、自分の見方は違う。為替レートは他国と比較した相対評価であるから外国の状況も見る必要がある。
2.欧米経済の見通し
先ず、ヨーロッパは、ECB(欧州中央銀行)が大量に資金供給し、一安心となっているが、ポルトガルは前日14.8%、スペインは7%超と危機は南ヨーロッパに広がり、ギリシャも事実上破たん状態にあり、ギリシャ政府と金融機関が国債の減額幅等についてネゴ中であり、解決に向かっている訳ではない。フランス国債も格下げ、ドイツ国債も応札が未達とジリジリと危機が進展している。ユーロはもう一度90円台に落ちる可能性が高い。
次にアメリカは、かなり良い。1月の雇用統計は想定外の改善だったし、失業率も8.5から8.3%への好転した。しかし、リーマンショックの後遺症は残っており、個人も金融機関もB/Sが悪い。来週ミシガン大学の消費者信頼度指数が発表されるが、まだマダラ模様である。
3.背景にある経済のトレンド
これら先進国の問題の背景には、世界の経済の中心が欧米からアジア(特に中国・インド)に移っていることがある。
2010年には中国のGDPが日本を抜き、いずれアメリカも抜く。インドは現在日中の約1/3のGDP規模だが、2050年には日本を抜いてNO3になると予想されている。インドの方が人口の伸び率や構成が若く、あと10年度中国を抜くと予想されている。この辺の詳しいところは著書「インドアズナンバーワン」を参照して欲しい。
しかし、このアジア中心の経済は初めてではない。【いや、これまでの大部分の歴史はそうであった。】有名なアンガスマディソンの推計によれば1820年の世界のGDPシェアは、中国29%、インド16%、英国5%であった。が、植民地化により19世紀半ばに転落したのである。【確かに年号を調べると、英国による植民地支配が確立したのは、インドで1857年のセポイの反乱の鎮圧以降であり、中国では1840年のアヘン戦争以降であり、1944年のブレトンウッズ会議でアメリカに覇権を譲るまで高々100年位に過ぎない】また、アジアで植民地にならなかったのは日本とタイの2国とされるが、ミュージカル/映画「King and I」に見られるように、タイ王制は維持されたものの、家庭教師は英国であり、事実上英国の支配下にあった。日本が植民地にならなかった理由は、地理的に遠いということもあるが、明治維新後の富国強兵政策により、日清・日露戦争に勝つまでの実力を備えていたことがある。第二次世界大戦後は、アジアの諸国は独立を果たし、日本⇒韓国⇒台湾⇒香港⇒シンガポール⇒アセアン諸国と順次は発展してきた。【これを経済学では雁行型発展という】 その後中国、インドが発展してきた。中国の場合は、1978年、訒小平主導で計画経済から市場経済への転換がスタートで、彼の「黒猫でも白猫でもネズミを捕るのが良い猫」という生産が大事という考え方に象徴される。インドはやや遅れて、1991年のNEP【New Economic Policy=新経済政策】により、市場経済へ転換し、輸入割当を廃止、設備投資を自由化したことがスタートであり、その時財務大臣として主導したマンモハン・シンが現首相である。【この辺は、石井昌司氏の論文「インド経済と現状の課題」http://kyoai.ac.jp/college/ronshuu/dp/ishii-dp5.pdfが詳しい】
従って、戦後はアジアの時代であり、それを示したのが10年前のアンドレ・グンター・フランクの著書「リオリエント」である。
欧州は財政だけは国別だが、通貨や銀行等の制度がある。一方、アジアでの制度はチェンマイ・アグリーメントしかないが、実際には日中韓およびアセアンの経済統合化は進んでいる。日中は域内貿易比率は60%だが、EUは65%とほぼ同程度になっている。そう簡単に「アジア連合」はできないが、いずれ制度が追い付いてくる。
為替レートに戻ると、世界経済でアジアが中心となり、そのアジアの通貨が上がっている。中でも元やシンガポールドルに比べて自由化され規模の大きい円が評価されている。
4.円高の影響
よく円高は大変と言われるが、1980年から1990年代にかけての250円から79円のように10年で3倍となったような激しさは今はない。実質購買力で比較しても、日本はデフレであり、名目の為替レートほど円高にはなっていない。1995年大蔵省国際金融局長当時アメリカのローレンス・サマーズ財務長官と連携して、アメリカもドル高を望んでおり、円高是正を行った。今は、アメリカが輸出を伸ばすためにドル安を容認しており日本政府の断続的介入は効果が乏しい。
円高のメリットどう活用するかを考えるべきである。海外旅行とかM&Aである。
また、韓国のサムソンのインド家電マーケットでのシェアは7割もある。日本のメーカーはハイクオリティに固執して高くて売れない。車でもインドのタタモーターは25万円の「ナノ」を売り出して売れている。成熟して買い替え需要しかない日本より、新規顧客がある中国やインドに食い込む必要がある。
投資家としては、円高を利用してグローバルに投資することが大事である。
為替レートに戻ると、ユーロは元に戻るのは難しく、乱高下が続く。アメリカは強いが、3〜4年も順調に続くとは思えない。
5.日本悲観論を排す
日本は成熟国家なのだから成長にこだわっては駄目である。企業は成長が必要なら外へ出ていけばよい。日本は素晴らしい成熟国家で、具体的には、環境、安全、健康である。
先ず、環境。日本は国土の65%が森林で、雨は世界平均の3倍も降る。ヨーロッパは森林を伐採して、牧草地や小麦畑にしてしまった。日本の近海は世界一の漁場で、魚に種類が豊富である。
次は安全。外国との戦争は、白村江、元寇、秀吉の朝鮮出兵があるが日本国内が危機にさらされたのは元寇のみだがそれも台風により助かった。日清・日露、第1次世界大戦、第2次世界大戦も敗れたのは1回のみ。異民族に征服されたり、大きな国境移動もない。平安・江戸時代は合わせて650年間内乱がなかった。明治初期、英国婦人イザベラ・バードが一人で東北地方を旅行したが、日本人は親切で危険な目には遇わなかった。
健康は、世界一の長寿国で、肥満率も先進国では一番少ない。
食べ物は、一番おいしい。ニューヨークでは日本食がブームで、築地を見学する外国人はその多種多様さにカルチャーショックを受ける。世界の3大漁業国は日本、ノルエー、チリだが、サンチャゴの魚市場は臭い(生きしめしないから)。
アメリカの経済学者ポールクルーグマンは、90年代の日本をかつて非難したが、リーマンショックのアメリカを経験して、日本の天皇に謝りたいと言っているように、外国で日本再評価が進んでいる。
楽天、ユニクロが英語を社内公用語にしたがグローバライゼーションを日本がやればさらに素晴らしい国になる。
海外生産だってうまくやれば空洞化にはならない。部品や半製品を輸出出来るし、海外進出に成功した企業ほど雇用も増えている。悲観することはない、成熟国家として、大いに世界に向かって発信すべきである。
第2部パネルディスカッション『2012年経済・日本市場・為替相場展望』
JPモルガンチェース銀行マネジングディレクター佐々木融氏、ITCインベストメントパートナーズ取締役岡崎良助氏、マネックス証券 チーフ・エコノミスト 村上 尚己氏、マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆氏、司会佐藤まり江氏
質問4つとお客さまからの質問を元にパネルディスカッションを行った。
(i)日本株、日経平均はどうなるか?(2/3 8,831円、昨年の高値10,890円(2月)、安値8,135円(12月)
各氏による予想は次の通り。
高値 安値 因みに昨年は、 高値 安値
佐々木氏 11,000 8,200 深谷氏 11,500 12,500
岡崎氏 9,900 7,900 内藤氏 12,500 12,000
村上氏 10,500 8,000 村上氏 13,500 13,000
広木氏 11,000 8,300 広木氏 14,500 13,500
各氏のコメント
佐々木氏:ヨーロッパがくすぶり安値8,200円、その後回復
岡崎氏 :最も弱気、アメリカが10%上昇するとして、ベータとボラティリティーで算出、2013年はもっと良くなる
村上氏 :アメリカは順調、日本株は出遅れを考慮
広木氏 :最終的に企業業績、シャープ、ソニー、パナソニックはすごい赤字、今年度はタイ洪水、リストラ費用で悪かったが、来年度(2012)は上値の可能性
(ii)為替レート(円ドル)
高値 安値
佐々木氏 78 69
岡崎氏 81 75
村上氏 80 73
広木氏 82 75
各氏のコメント
佐々木氏:ドルが問題。貿易赤字、債務国、金利ゼロ、雇用統計や失業率のサプライズにも余り上がらない。
岡崎氏 :アメリカの金融政策が引き締めに転じない限り上がらない。今年は動かない。狭いレンジ。
村上氏 :アメリカの金利が重要。企業業績は案外いいので、少しづつ上がっていく。
広木氏 :日米金利差が重要だが、FRBは2014年後半まで金利を上げないと言っている。金利差を材料には動かない。
(iii)新為替レート(ユーロ円)
高値 安値
佐々木氏 110 93
岡崎氏 112 93
村上氏 105 90
広木氏 110 95
各氏のコメント
佐々木氏:為替はリスクオンとリスクオフのセンチメントがどうなるかで決まる。リスクオンになれば、ユーロやその他通貨が上がり、円、ドルは弱くなる。高値は、現状アンダーウエイトなのが、買い戻しに動く時に生じる。
岡崎氏 :リターンリバーサルは大きい。すなわち戻す時は大きく戻す。安値はビッグマックの価格比で算出。
村上氏 :ドルユーロを1.2として算出。
広木氏 :日米金利差が重要だが、FRBは2014年後半まで金利を上げないと言っている。金利差を材料には動かない。興国の利上げの動きは継続する可能性が高いので、また日本の景気は相対的に弱いので、新興国通貨は全般的に強含み。
(iV)2012年、自分が100万円を投資するとすれば?
佐々木氏 日本株/アジア通貨/豪ドル/ユーロを1/4ずつ
リスクオフが高まったところで下落したユーロ、豪ドルを買い、リスクオンを待つ。アジア人がアジア通貨に興味を持つようになった。欧米とはdecouplingしてゆき、いつかは切り上げに。
岡崎氏 米国ハイイールド40%、ブラジル30%、J-REIT20%、日経ボラティリティインデックス10%
米国ハイイールドは低格付けの社債等のファンドであり、そこにはリーマンブラザーズ社債、GMやChryslerのバンクローン等が含まれ、金融緩和や景気回復によりゾンビのように底から立ち上がってくる。ブラジルは米国同様ベータが高いので、回復期には他より大きく上昇する。J-REITは現在6%と利回りが最も高い。日経ボラティリティーインデックスは2/27大証に新規上場予定で1株20万円で新しいタイプの投資商品。
村上氏 半分は株(中国20%、日本15%、米欧15%)、原油10%、金10%、現金30%
ヨーロッパのケリがついていないので、さらに下がる場合があるので現金を持っておく。中国のバブル崩壊は政策で対応可能であり、まだ日本の1970年の高度成長時代でありレバレッジをかけていないので大丈夫。
広木氏 日本株50%、DAX25%、金25%
日本株は割安に放置されている、ないしフェアな価格水準なので、業績が素直に反映する。銘柄をあげれば東レ、日本電産、ユニチャーム(これらは2期連続増益)、ローソン、コマツ、ファナックなど。グローバルに投資している日本企業の株、徹底的に売り込まれた株(海運株、ホンダなどの自動車)、大手銀行株(敵失によって相対的に地位が上がる)DAXはリーマンショックから6割戻しを達成しており、半値戻しは全値戻しの格言どおり。金はこのところ下がっているので。
お客さまからの質問に対し
(i)日本国債が暴落し、ハイパーインフレーションがくるか?
村上氏:ヨーロッパの連想だが、ユーロは通貨体制への不信であり、日米は違う。
(ii)ユーロは崩壊するか?
佐々木氏:下げる可能性はあるが、戻りは大きい。国債が問題であってユーロではない。テクニカルに崩壊は無理。
(iii)これまでの失敗とそこから得た教訓
広木氏:リーマンショックの前に、自分でベンチャーファンドを立ち上げたが、スポンサーがおかしくなった。チャレンジはいいが、タイミングを見誤るな。
村上氏:個人としての投資で、2007年のサブプライムの時キャッシュに戻したが戻しきれなかった。バブルが膨らんだ
時の逃げ方が大事。
岡崎氏:2001年3月の日銀ゼロ金利政策は間違っている、日本はだめと思い、マーケットを見なくなってしまった。政策
の善悪ではなく、損得だけを考えるべき。
佐々木氏:個人的投資で金を徐々に買って順調に上がったので、これまでの持ち高に匹敵する額を買ったら下がって大
損、やはり皆が注目しない時に自分の判断で買うのがいい。
(iv)お客様へのアドバイス
佐々木氏:為替はしばらく慎重に。ギリシャのデフォルトで下がった時にユーロと豪ドルを買う。
岡崎氏 :新しい商品が生まれるので、研究すればチャンスをつかめる。
村上氏 :アメリカの経済の動向が重要。景気の循環と構造の転換を切り分ける見方を養う。
広木氏 :日本株はこの20年で調整が終わった。今後はファンダメンタルズ次第なので知識の吸収をおこたらないこと。
第3部スペシャル対談 「グローバル経済展望2012〜日本のこれからを語る」東京大学大学院経済研究科教授 伊藤元重氏(以降「伊」と略す)とマネックス証券 代表取締役社長CEO 松本 大氏(以降「松」と略す)
松 日本経済は閉塞感があるが?
伊 幅があるので、進捗を見ながら微調整していく。
松 ブレ幅は大きくないか?
伊 欧州、ギリシャがダウンサイドリスク
松 ギリシャは金額的には小さい。政治の問題ではないか
伊 解決には、政治的に①もっとドイツが支援するか、②根本的には通貨単位と財政単位を同じにすることだが、これ
は時間がかかる。ドイツの企業は相当メリットを受けているので、財政を含めた連携、統合が望ましい。
1980〜2005年は大いなる安定の時代で、ベルリンの壁の崩壊、マースリヒト条約、ユーロ誕生とユーフォリアが広がったが、これが逆回転し始めて、欧州の日本化、停滞が始まる。アメリカはマダラだが、マクドナルド、コカコーラ、ジョンソンアンドジョンソン、IBMなど企業業績は良くなっており、去年暮れから明るさが増してきた。
松 ダボス会議でもっと貯金をしなくてはいけないという話を聞いたが。
伊 リーマンショックまで消費が過剰だったとの反省からの貯金(Saving)ではないか。消費を抑えているので、その埋め合わせに、オバマ大統領は5年で輸出を5倍にすると言っている。先進国のSavingで生じた資金を新興国に流し、新興国の消費が増えれば良いのだが。
松 消費の埋め合わせに輸出?
伊 従い、ドル安を望んでいる。長いトレンドとしては、新興国が上昇していくが、途中でクラッシュに見舞われるリスクもある。資金も経済の重心も移っているが、これは経済学でいうConvergence Theoremで一人当たり所得が平準化していくという流れである。しかしサブサハラの国のように落ちこぼれもある。クリステンセン教授の「Disruptions」「Innovator's Dilenmma」という考え方もおもしろい。シアーズはハウスカード、ドライブスルー、ダイレクトマーケティング等の素晴らしいイノベーションを導入したが、いい商品が安く買えればよいというウオールマートに敗れた。
サムソンの成功は人件費が日本の半分だからという主張をする経営者もいる。
松 円安にするにはどうすればよいか?
伊 円高の悪影響が言われるが、実質レートで見ると、現在は真ん中辺の水準
松 消費税問題は?
伊 今年は消費税がどうなるかがポイント。野田首相は少数与党との認識で、政治的混乱から解散へというシナリオが起こりそう。消費税だけでなく、所得税や炭素税もある。一方、寿命が延びれば医療費や年金額は増える。2025年には団塊の世代が75歳を越えるので医療費が大幅に増えると予想される。消費税を上げても、駆け込み需要もあり経済へのマイナスはそれほどでもないかもしれない。解決にはインフレがいいかもしれず、株式市場にもプラス。長期的に見て医療・年金をどうするか考えるべき。
松 電力問題は?
伊 政府の電力改革検討会の座長なので個人的意見は言い難いが、消費地に近いところでCogeneや太陽光等様々な発電を行えばいいんのではないか。サハリンからLNGではなくパイプラインや電力で持ってくるといった発想もある。
松 TPPは?
伊 20世紀はGATT、WTOの時代だったが、21世紀は、FTA/EPAの時代で世界で200位ある。アメリカはNAFTAをやり、欧州はユーロを作った。アジア・太平洋ではアセアン+日中韓で10年やってきたがうまくいっていない。そこにアメリカがTPPに参加して侵入してきた。Gravityの理論で、近距離の方が貿易量が増えるのが自然である。従い、アジアの連携はいずれにせよ深まってい行く。産業構造の変換が継続的に起こっており、海外への進出が雇用にも良い結果を生む。
松 トンネルが長くなり、問題の先進国である。
・・・この辺で疲れてきたので後は省略する。
以上、間違いがあるかもしれませんが、いろいろ勉強する種がわかり大いに参考になりました。マネックスさん、今後ともよろしくお願いします。
以 上
追伸、ググったらもう先輩がいらっしゃいました。
1.あんどうのブログ「マネックス証券お客様感謝day2012 in 東京に行ってきました。」http://yaplog.jp/ando_blog/archive/3831
2.吉野充巨「榊原英資氏【新春マーケット展望】について【マネックス証券お客様感謝day2012より】http://mbp-tokyo.com/officemyfp/column/14551/
